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本・論文紹介

性同一性障害の人々を知る!
(インタビュー集)
『性同一性障害30人のカミングアウト』
針間 克己、相馬 佐江子 (著)
双葉社 2004 \1.680
 性同一性障害とは何か知りたい。そんなとき、医学の専門書もいいですが、まずはこのインタビュー集を読むのはどうでしょうか。

15人のftm(女性→男性)、14人のmtf(男性→女性)、そして1人のインターセックスの人が、自分の半生を、笑いあり涙ありで語っています。

 性同一性障害に関するエッセイはたくさん出版されていますが、この本が特に素敵なのは、多くの人の声を集めたことで、月並みですが「性同一性障害と一口にいってもいろいろな人がいる!」と、身にしみて実感できるところです。ホルモンや手術で体を変える人、変えない人。また、子供や妻・夫のいる人、いない人。職場で希望の性別で働いている人、そうでない人。などなど。 生活環境も価値観もそれぞれですが、誰もがこの時代・この社会のなかで、精一杯生きているのが伝わってくると思います。 そして、かれらが隠れて生きるのではなく、明るい笑顔の写真とともに、辛いことも楽しいことも素直に語っていることが、何よりも貴重に感じられます。(池田瑞恵)


「オカマ」のすっぴん生活を覗く!
(イラストエッセイ)
『オカマだけどolやってます。』
熊町みね子(著)
竹書房 2006 \1,000
 「はじめまして。都内の平凡なolですが、実はチン*がついています。会社の人にはバレてません。」(帯より)

 タイトルのとおり、オカマでolとして働いている、熊町みね子さんのイラストエッセイです。難しい活字は苦手だけれど、性別を変えて生きているひとの、素顔の日常生活が知りたい!という人におすすめです。

 オカマという言い方には、抵抗がある人もいるかもしれませんが、熊町さんは性同一性障害なんていう肩肘ばった呼び方はキライ。性同一性障害の体験談というと、なにかと暗い辛い話が強調されがちですが、このエッセイはナチュラルでネタ満載で、身構えずに読めます。職場で地声のくしゃみが出ちゃってヒヤヒヤしたり、男に告白されてカミングアウトに困ったり・・・。女になったばかりの頃はメイクも張り切っていたのに、いまでは眉毛を書くだけで家を出ちゃう日も・・・なんて話には、思わず「そうだよねー」と笑っちゃうようなものも。

 この一冊で、「オカマ」が身近に感じられること間違いなしです。あなたの友達にも、同僚にも、いるかもしれません。(池田瑞恵)


性同一性障害医療の黎明を知る!
(ドキュメンタリー)
『性同一性障害:性転換の朝(あした)』
吉永みち子(著)
集英社 2000 \714
 1996年からの数年間は、多くの性同一性障害の人々にとって、まさに激動の年だったといえるでしょう。それまで「ヤミ」だった性転換医療が、性同一性障害という病気の治療という正当な医療行為として認められるようになったのです。性同一性障害という病気について、マスコミが大きく取り上げ、人々に知られるようになったのも、このころからです。

 埼玉医科大学をはじめとする医療関係者と、虎井まさ衛さんら当事者との、二人三脚の取り組みをタイムリーに追ったのが、このドキュメンタリーです。

 もうすぐ10年近く経とうとしている現在から見ると、現在はかなり定着してきた性同一性障害医療も、当初は多くの議論や戸惑いがあったことがわかります。

そもそも、「性同一性障害は病気なのか?」という議論から始まり、それはいまも決着していないのです。
 このドキュメンタリーにも、性同一性障害医療が打ち立てられたことが、当事者にかなりの救いとなったというエピソードが載せられています。現在もまだ十分な体制とは言えませんが、この当時の努力によって、いまの人々は情報にも医療にもアクセスしやすくなり、ずいぶん社会的な受け入れが進んで来ているとい

えるのではないでしょうか。(池田瑞恵)


性同一性障害の臨床を知る!
『性同一性障害の基礎と臨床』
山内 俊雄 (編著)
新興医学出版社 2001 \1,690
 日本で最初に出版された、性同一性障害専門の医療書です。主に内容は医療関係者向けですが、値段も安く、読みやすいつくりなので、一般の方も手に取り安いでしょう。自助グループマップや医療的・社会的課題も挙げられていて、医療に専門的な関心がない人でも役に立ちます。

 性同一性障害医療の背景にある医療仮説と、診断と治療のガイドライン、そして実際のケース・スタディなどが示されています。ftm(女性→男性)とmtf(男性→女性)の場合の違い(性的指向や初発年齢など)が統計によって示されていたり、興味深いこともたくさんあります。

 ただし、あくまで性同一性障害医療が始まってほんの数年の時点の本ですから、内容をすべて鵜呑みにするのは禁物です。出版後、診断と治療のガイドライン

も大きく変わってきていますし、病院を訪れる人の層も変わってきているといいます。性の分化に関する論文もアップデートされています。

 医療関係者の方も、まずはこの本を出発点に、あとはご自身の臨床経験や新しい情報で補っていくことをおすすめします。(池田瑞恵)


性は「生まれ」か「育ち」か?
(ドキュメンタリー)
『ブレンダと呼ばれた少年』
ジョン・コラピント(著) 村井智之(訳)
扶桑社 2005 \1,680
 「双子の症例」というのをご存知でしょうか? 性は生まれたときから決まっ
ているのか、あるいは育てかたで決まっていくのか、という、「生まれ(nature)」vs「育ち(nurture)」の論争に火をつけたのが、この双子を題材としたケース・スタディでした。
 生後8ヶ月の双子の男の子のうち一人がペニスを損傷してしまい、性科学者ジョン・マネーの薦めによって、ブレンダいう女の子として育てられました。これは一見うまくいき、ジョン・マネーは「性の自己意識は環境によって決まる」という持論を補強する例として、ブレンダのケースを大々的に発表し、大きな社会的注目を集めたのです。

 しかし、思春期になるにしたがって、ブレンダは女であることに疑問を感じるようになり、精神的に大きな苦痛を味わいます。そして、最終的にデイヴィッドと名乗って、男性として生きるようになるのです。この事実からジョン・マネーの説を批判し、生まれる前後で既に脳の性分化が方向づけられていることを強調したのが、科学者ミルトン・ダイアモンドです。

 このドキュメンタリーはそのデイヴィッド(ブレンダ)の半生を追い、ジョンズ・ホプキンズ病院で行われた不適切な医療行為を暴露し、自分の理論のために幼い子供をモルモットにしたと、ジョン・マネーを告発しています。

 この「双子の症例」の論争や、そのとき築かれた脳の性分化の理論が、現在の性同一性障害医療の背景となっているのです。

 非常に胸を打つドキュメンタリーなのですが、現在この本を買って読むときに注意したいことがあります。それは、邦訳の解説によって、この本が著者ジョン・コラピントや科学者ミルトン・ダイアモンドが意図したのとは異なる方向に歪められて、ジェンダー・フリーなどの批判に用いられていることです。本書が述 べているのは、「生まれ」の性が絶対だということではありません。そうした「生まれ」と「育ち」の二者択一を科学者ミルトン・ダイアモンドが注意深く避けたことも書かれています。そして、このドキュメンタリーが伝える最大の教訓は、専門家が持論に拘って、事実をねじまげ、人の人生を議論に利用することの恐しさなのです。(池田瑞恵)


性別の狭間で真っ直ぐに生きる!
(マンガ)
『is:男でも女でもない性』
六花 チヨ (著)
講談社 2003〜 \410
 性同一性障害から寄り道して、インターセックス(いわゆる半陰陽)についても読んでみるのはどうでしょうか?

 実は、性同一性障害に関するマンガは、ステレオタイプな描写が多くてウンザリすることもあったのです。その点『is』は個性を大事にするマンガです。感動の涙なしでは読めません。

 主人公の星野春は、男女両方の器官を持って生まれたis(インターセックス)。isの子供は男女どちらかに振り分ける手術・投薬を受けて、isの事実を隠して育てられることが多いのですが、春の両親は何よりも春が「自分らしく」生きるように願い、isの子供として育てることを決めます。春は真っ直ぐな子に育ち、isであることも隠さず受け入れて生きていこうとします。しかし、少年サッカーチームで頑張っていたのに、身体は女性化し始め、一緒にできなくなってしまい・・・。男の子側で生きてきたのに、身体の変化に戸惑います。進学した高校も女子の制服で通学しなければならず。女子として生きるのは苦痛なのに、そのころ出会った男子を好きになり、さらに心は揺れ・・・。

 と、ネタバレ気味ですが、男性と女性の間で揺れ動く春の気持ちと選択が、リアルに描かれています。一番好きなのは、迷いながらも「違い」を受け入れて、自分らしく生きていこうとする姿勢です。

 「自信を持ちたい/みんなと「違う」/この身体を/少しずつ受け入れていきたいんだ」

 インターセックスに限らず、男性と女性のあいだで揺らいだ経験のある、すべての人を勇気づける作品です。(池田瑞恵)

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2008年2月24日

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